『ネコの楽園と呼ばれて…おいらの島に観光客がやって来た』

『ネコの楽園と呼ばれて…おいらの島に観光客がやって来た』

人口わずか16人の島に100匹を超えるネコが暮らす愛媛県大洲市長浜町の沖合に浮かぶ青島。
過疎と高齢化が急速に進む島の厳しい現実に迫る。
<11月13日(金)
 瀬戸内海に浮かぶ青島。かつて漁業で栄え、最盛期には800人を超えた住民も今ではわずか16人にまで減少した。空き家が目立つ島には、店はおろか自動販売機すらない。まるで時間が止まったようなこの島で目につくのは、人よりもネコの姿…。
 もともとネズミ退治のために連れて来られたというネコは、漁業の衰退で住民が島を去る中、野良ネコとなり次第に増えていったという。その数は今では100匹を超える。住民十数人の小さな島に100匹を超えるネコが暮らしている様子がメディアで取り上げられると、青島は“ネコの楽園”と呼ばれるようになり、全国や海外からも大勢の観光客が訪れるようになった。
「無人島になるような島に人が来てくれる…」。漁師が生きた魚を提供してネコが捕まえる様子を披露するなど、島は歓迎ムードに包まれる。詰めかける観光客に対応するため、島のルールを設け、みんなが楽しく過ごせる環境づくりも行った。
 しかし、その賑わいの一方で青島には過疎の厳しい現実が。島を出た人たちが帰省し活気づくお盆を迎えても、島に向かう船に乗っているのは観光客ばかり。「さびしいわ…さびれていく一方やね…」。30年にわたり青島の往来を見守ってきた船長も島の行く末を心配する。
 島の一大イベントである「青島の盆踊り」。踊り手が化粧を施し、仮装して踊り明かす独特の盆踊りは、古来から脈々と受け継がれてきた伝統行事。ところが、帰省する島民が減り、ついにこの夏、開催することができなくなった。急速に進む過疎と高齢化。島民16人の平均年齢は72歳。“ネコの楽園”としてにぎわいをみせる一方で、島の活力は急速に失われていた。そこに新たな問題が持ち上がる。観光客が与えるエサで栄養状態がよくなり、ネコが増え過ぎているのではないかという懸念。対策を講じたい行政は島民にネコの管理を依頼するが、話し合いは難航する。解決すべき課題は理解していても、過疎と高齢化に直面する島には実行する人がなかなかいない。このまま放置しておくこともできず、協議を重ねた結果、ネコの世話を熱心に行ってきた紙本直子さん(64)が中心となり対策に当たることになった。
「かわいい、だけではだめだからね…」と語る紙本さん。数人の島民に声をかけ、去年10月、「青島猫を見守る会」を発足させた。野良ネコではなく、「地域ネコ」として、エサの量の調整や健康状態などを管理していくことになった。活動の一環として、ネコの避妊も始めた。
「地域ネコ」という選択。そこには、今まで通りネコと静かに暮らしたいという島民の思いが込められていた。一躍有名になった青島のネコをめぐり、インターネットなどで様々な意見が飛び交うようになり、ボランティアでネコの避妊や去勢、里親探しを申し出る人まで現れた。見守る会の会長として対応を進めてきた紙本さんも、「もうそっとしてほしい…ネコに関して…」とこぼす。
 島民たちの切なる願いがかなう日は来るのだろうか。

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